応募資格は『体重百キロ以上』のみ。応募された中から抽選でイベント参加者が選定される。
これには多くの巨漢達が食い付いた。
「まったく何てイベントだ。引きこもりの僕にとってこんなイベント………………最高じゃないかぁぁぁあああ!! グヘグヘぇ喜べ僕の嫁達よ。現実世界でも僕が億万長者になる時が来たのだぁぁぁ! さーて、早速申込みだってばよ」
即座に申込みを完了した体重百三十キロの太杉フトシ(ふとすぎふとし)。
面白半分で応募した太杉であったが、もし抽選に選ばれたら死ぬ気でダイエットしようと考えていた。
一億円は是非とも欲しい。もし失敗したとしても痩せてイケメンになれるいい機会だと考えたのだ。
そして応募してから数日後――太杉のパソコンに一通のメールが届いた。
「誰だこれ? 迷惑メール? 出会い系? まあどちらにしても開いちゃうけど」
セキュリティが完璧な環境を作り上げている太杉は躊躇なくメールを開く。
「えーと何なに………………………………ん!?
き、き、キタキタキタキター! 億万長者キタァァァァ!!」
それはイベント会社からの当選を知らせるメールであった。
太杉は全身に付いた肉を激しく揺らしながら、歓喜に舞った。
ーーそれから一週間後。
企画の詳細説明を受けるためイベント会社に行く事になった。何年ぶりかの外出となるが太杉に不安も恐怖心も無かった。今、頭を支配しているのは金銭欲のみ。
「失礼……します」
イベント会社に着き、部屋に入るとそこには……十数名の巨体が居た。
ここに居るのは皆同士となるのだが、引きこもりの太杉に話し掛ける勇気は無かった。一番端に置いてある椅子に腰を掛け、結局数十分間ひと言も発する事なく説明開始を待った。
太杉が待つ事に痺れを切らした頃、漸く部屋に一人の男が入ってきた。
「皆様大変お待たせいたしました! 企画責任者の成金(なるかね)です。本日はご来場ありがとうございます! 夢を掴む一歩を踏み出した気分はどうですか? 皆様にはこのイベントを存分に堪能して頂きたいと思います」
赤いシャツに真っ白なスーツを纏った成金は、このイベント会社の代表である。ニヤリと口角を上げながら軽快に話し出した。
それから一通りの挨拶を終えると、このイベントの具体的な説明に入った。
ルールは単純。本日ここで身体検査と体重測定を行い、その体重を基本として体重の半分以上の減量を目指す。減量方法は自由。一ヶ月後は多くの観客を集め、ドームで大々的に結果発表を行うらしい。達成した者には漏れなく一億円をプレゼントし、不達成の人にはお楽しみ企画を用意しているとのこと。
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