俺は山田トオル。入社3年目のサラリーマン。職場での営業成績はビリ。いつも上司から怒鳴られており、皆からお荷物扱いをされている。
まあやる気もない。
そんな俺だが、彼女が出来たときのためにと見栄を張り、ちょっといいマンションに住み始めた。しかし一向に彼女はできず、今や生活費を圧迫するだけのカネ食いマンションと化していた。
寝て起きてを繰り返すだけのマンションへ、いつもの様に酔い潰れ朝方帰ってきた。
マンションの入り口に引っ越し屋のトラックが止まっていたが、そんなことは気にせずに自分の部屋へ向かう。すると、引っ越し先は自分の部屋の隣だった。
「隣かよ、なんか面倒くせー」
愚痴をこぼしながら、通路においてある段ボールを千鳥足でよける。
隣の部屋の前を横切るときにドアの隙間から中が見えたが、隣人の姿は見当たらなかった。
まあ関わることもないし、どうでもいいかと思いながら自分の部屋へと入った。
「ふぅ、今日も飲みすぎた」
部屋に入るとすぐにタバコに火をつけ、ソファーに深く腰を掛けた。
帰宅してから直ぐの一服が俺の日課であり、体全体に染み渡るこの感じがたまらない。
ひとときの幸せを感じながら寛いでいると、チャイムが部屋に響き渡った。
「はぁ? 何だよこんな朝早くに!」
自分の幸せな時間を邪魔され、不機嫌のままインターホンを取った。
「はい」
「朝早くすみません。隣に引っ越してきたので挨拶に来ました」
インターホンに近づき過ぎているのか、顔は見えなかったが男性のようだ。
ちっ! 男かよと思いながら、無愛想に返事を返した。
「はい、今でますよ」
インターホンを切り入り口に向かう。
はぁ、めんどくさ……。
ガチャリとゆっくりドアを開け、隣人の顔を確認した。
するとそこには…………俺がいた。
……は?
俺は混乱し一度ドアを閉めた。
い、いま俺がいなかったか? いや、そんな訳ない。見間違いだろ。そんな自問自答を繰り返しつつ、一旦気持ちを落ち着け改めてドアの覗き穴からそっと覗いてみる。するとやはり俺がいた。
身体中から嫌な汗が吹き出てきた。
落ち着け、落ち着け俺。冷静になれ! とそう自分に言い聞かし、深呼吸をする。
「ふぅー」
少しだけ落ち着いてきた。でもどうする? 警察呼ぶか? いや、そんなことしたら余計にめんどくさくなりそうだ。どうする?
考えても答えはでない。
くそ、もうこいつに聞くしかないだろ! と、俺は半分ヤケになり、勢いよくドアを開けてそこにいる俺を睨み付けた。
そして……そこにいる俺と目が合った瞬間、頭のなかに声が響いた。
『おめでとうございます! 隣人に[未来から来た自分]が当選しました。有効期限は3日間です。3日経過後のお手続きについては追ってご案内いたします』
何だ……これ?
俺が混乱していると、もう一人の俺が話しだした。
「俺は未来のお前だ。俺の言う通りにすればこの3日間でお前の人生、いや俺の人生は変わる」
「お、お前何か知ってるのか?」
「俺が知ってるのは、俺がお前で、お前が俺だということだ。そして、俺が未来から来た……これが何を意味するか分かるか?」
未来……。
「もしかして、お前はこれから起こることを知っているということか!? もしそうなら、お前は宝くじの当選番号も分かるってことだよな!」
「さすが俺、察しが早い。その通りだ。お前が毎週買っているナンバー7、その次回当選番号を俺は知っている」
ナンバー7とは、1から100までの数字から7つ選び、その選んだ数字7つが当選数字と全て一致すれば1等7億円が当たるという宝くじだ。
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