司会者がそう言うと、バニーガールはアリーナから離れていき、観覧席とアリーナの間に頑丈そうな鉄格子が出現した。
『私達運営が飼い慣らしたペットとの戯れをお楽しみ下さい。ミーちゃん、カモーーーン!!』
司会がそう叫ぶと、一人目の男の入場口とは反対側にある大きなドアが開き、巨大な何かが姿を現した。
グルルと喉を鳴らす巨体。ライオンの様な風貌をしているが、サイズが異常で象並みのデカさ。鬣は生えているがそれ以外の体毛は無く、代わりに蛇のような鱗が身体を覆っている。牙は剥き出しとなっており、滴る涎が地面に落ちる度に、地面が焼け焦げていく。
化け物としか言いようが無い。
その化け物と共にアリーナに取り残された一人目の男は、恐怖で腰が抜け失禁した。
一歩また一歩と近づく化け物。
『さあ、ミーちゃんと楽しい時を過ごしてちょーだい!!』
更に煽る司会。
観客席からも狂気と歓喜の声が響く。この時を待っていたかのように……。
男は泣き叫ぶ。髪の毛を掻き毟り後退りする。しかし化け物との距離はどんどん縮まっていく。
控え室の太杉はこの光景を見て思考が停止していた。
「ハハハ、何が起きている? 嘘だろ。ただの演出だ……よね」
しかしそんな太杉の思いは裏切られ、一人目の男は、耳がつんざけるような叫び声を上げながら、化け物に喰い殺された。
死に方は酷いものだった。前脚で体を押さえ付けられた際に、内臓が破裂したのか口から血を吹き出す。さらに尖った爪で腹の中を掻き回され、最期は頭から喰らい付かれ、バリバリ咀嚼されながら一片も残す事なく食べ尽くされた。
「ひぃっ!! どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする」
太杉はパニック状態に陥る。逃げ出そうにも控え室の扉は開かず、どうすることも出来ない。
生き残る為には……体重を半分以下にするというミッションをクリアするしか道はなかった。自分は達成出来る筈と思いつつも、体重を測っていない為確信は無い。
「どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする」
『それでは二人目行ってみましょう!! 二番目の挑戦者、いらっしゃーーーい!!』
司会の進行と同時に部屋の鍵が開いた。
「ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ」
その時、太杉の視界にチェーンソーが映った。
「こ、これだ……。やるしか無い」
即座にチェーンソーを手に取りエンジンを掛ける。
減量方法は自由と言っていた。ならば腕を切り落としても問題は無い筈。死ぬよりマシだ。一億円あれば治療だって出来る……と太杉は錯乱の中決断をした。腕を落とせば確実に達成出来ると信じて。
エンジン音が加速していく。
「行くぞ行くぞ…………………………ぎ、ギィやァァァァァァァあああああ」
腕の付け根に歯が触れると、強烈な痛みが太杉を襲った。血が飛び散り、壁が赤に染まっていく。
「うぎゃギャごゃぎゃぎゃぁぁぁぁ」
数秒後――ゴトンと音を立て太杉の左腕が床に転がった。
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