痛みで意識が飛びそうになるが、それに耐え、太杉は走った。早く終えるべくアリーナに向かい必死に走った。
アリーナに辿り着くと、腕の付け根から多量の血を流しながら登場した太杉に向け、大歓声が上がった。
『これは驚きました!! 自ら腕を切り落したようです! 何というパフォーマンス、何という金への執念。素晴らしい! 最高の挑戦者がここに現れました』
司会の言葉など耳に入らない太杉は、体重計へ一直線に向かい飛び乗った。
『さぁ! そんな彼の結果はどうだー!』
ドラムロールが鳴り響く。
百の桁は『0』、十の桁は『6』。
太杉の達成条件は六十五キロ以下。太杉は朦朧とする意識の中、一の桁に注目する。
『さあ、一の桁はどうだ!!』
ジャカジャンという音と共に目隠しが剥がされ、現れた数字は……『5』。
「よっしゃぁぁぁ! 達成だぁぁぁ」
涎を垂らしながら喜びの声を上げる太杉。観客席からも「おおー」と声が上がった。
しかし、何故かドラムロールは続く。
「?」
そしてバニーガールがゲージの右端に貼ってあった目隠しシールを一気に剥がした。
すると、そこには……『.100』と表示されていた。
『ざざざ、ざんねーーーん!! 百グラム超過です! 惜しい、惜しすぎる!! あと百グラムです。コップ一杯の差もありません! これは悔やまれます!』
「ば、馬鹿な……。あ、あれ……れ……目の……前……が……」
急に力無く倒れ込む太杉。バシャッと自らの血の池に頭から突っ込み、血液を一帯に飛び散らせた。
『では、お楽しみ企画に……と行きたいところですが、只今バニーガールが確認したところ、残念ながら挑戦者は既に逝ってしまっまったようです。皆様待望のお楽しみ企画はお預けですが、これはこれでお楽しみ頂けたのではないでしょうか!!』
太杉の死に興奮する観客達。会場のある一点から太杉コールが始まり、波紋のように広がっていく。最終的に会場全体が太杉の名前を叫び続けた。
――モニター室
「アイツ本当は成功していたのに……成金社長、あなたも残酷ですね。しかも百グラム以上血液噴き出してたし、バレちゃいますよー」
「ハハハ、良いんだよ。誰も達成なんか望んでねーし、クズ共に払う金なんて無ぇから。
俺は権力者達に興奮と刺激を与え、同時に社会のゴミ掃除もする最高のイベンターなんだよ。途轍もねぇ額の金も動く。こんな効率的なこと他には無ぇだろ?」
「そうっすね! それじゃあ早速次のクズ掃除いっちゃいますか」
完
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